第五話









もうすぐ授業が始まる頃、教室はギリギリまで席につかず友達との会話に盛り上がっていた。昨日の番組、雑誌、アニメ、芸能、ニュースと、様々な話題で盛り上がる中、田中煉瓦は誰とも話さずにキョロキョロとあたりを見渡していた。
「なあ、透さん来てないか?」
「ん、ああ、そういえばいないな」
「光もまだ来てないみたいだな。家で何かあったのか?」
男子生徒二人もキョロキョロと教室内を見渡してみた。同じ顔二つがどこにも見当たらない。
「ハッ! もしかして透さん、針入高校に殴り込みに行ったのか?」
「え、針入ってあの針入高校か?」
「ここ最近のあのナイフの攻撃、あれは針入高校の物だと俺は思ってるんだよ! 透さんはあっさりとかわしてたけどさ」
煉瓦は手に汗握り今までのナイフの本数を思い出す。あれはパンチだ。あれだけの数のパンチを避けて傷一つつけていない。勝率百パーセントだ。
隣で見ていたがその避け方はまるで予期していなかったかのように自然体で、少し驚いた顔をしている所もまた凄い。
――避けて当然なのに、油断していると見せかけて相手の油断を誘い込むなんてカッケー!
煉瓦が都合よく解釈しているその近くで、一人の女子生徒が窓の外を見て何かに気が付いた。
「あれ、グラウンドにいるの誰?」
「ん? ……あ、あれって透君じゃない?」
「え?」
煉瓦が慌てて窓際に駆け寄り外を見る。確かにグラウンドには二つ人影があった。風で砂埃が魔って見えにくいが、あのシルエット、頭には帽子がかぶっているのが見え、煉瓦ははっきりと誰か理解した。
「透さんだ! もしかして、今からタイマン?」
がやがやと違う喧騒に包まれ、全員窓へ近づき外を見た。砂埃が風下へ流れ、グラウンドにいる影が三つだという事に気が付いた。
一つは学ランに帽子を被った姿。もう一つは長い髪を一つに束ね透と向き合っている。
そして最後の一つは長い髪を押さえながら、スカートを押さえ二人より離れた場所に立っている。
「あれは……女?」
透の相手は女だ。煉瓦が眉を顰める。針入高校の番長は男だ。それにあんなに小さくはない。
「誰だ?」
「何してるんだ、あんな所で……」
「あの子、隣のクラスの櫃本さんじゃない?」
「ああ、あの子か?」
「え、何してるの?」
有名な喧嘩の強い不良の新橋透と、隣のクラスの女子生徒が一体何があってグラウンドで向き合っているのだろう。
煉瓦は首を傾げた後、手を打った。
「分かった! あの子、また告白するきだ!」
「告白? またって何?」
「こんな朝から?」
「マジかよ! 俺櫃本狙ってたのに!」
がやがやとまた騒ぎは大きくなる。窓を開けて隣のクラスを覗いてみると同じように生徒が窓によってグラウンドを見下ろしていた。誰もいないグラウンドにある人影、それもいい噂のない新橋透がいるとなれば何かが起こるだろうとわくわくしてもおかしくない。
どんなダイナミックな告白が行われるのだろうと煉瓦が笑っていると、影が動いた。
動いたのは千歳だった。
真正面から腕を振り上げ立ち向かうその姿は告白するとは到底思えない。
小さな人影が俊敏に動く様は虫のようなものだった。だが、見ている全員が思わず息を飲んだ。
「すげぇ」
透も櫃本千歳も恐ろしいほどに細かく動いている。広いグラウンドの中、砂煙をまき散らしながら向かい合い、攻撃を仕掛けていく姿は近くで見ると更に緊迫した臨場感が漂っているのだろう。
「何だよアイツ、新橋と張り合ってるぞ」
「あ、あの子ってもしかして……」
櫃本千歳の倦怠した中学時代のターゲット選びの噂を思い出した一人から、その情報が電波するまでの間、千歳と透のふりをした光は休むことなくぶつかり合っていた。



光はまず思ったのは、透から聞いていた話と違う、という事だった。
――武器、持ってないじゃないの。
振り上げた拳はただの拳で、そこに刃の煌めきや鈍器の冷たさは感じられない。純粋なる肉体で戦いを挑んできている。
武器を想定していた光は相対した時拍子抜けしてしまったが、ぶつかって数手で砂煙の中飛び上がり、踵落としを決める千歳と視線がぶつかり合った。
――コイツ、出来るかも……。
踵を腕で受け止めた光は、まだ評価を下し切れていなかった。
昨日、透とケリをつけると約束した次の日の今日、千歳の方から決闘を申し込まれこれ幸いと入れ替わった。グラウンドで対面した千歳は今までの不良たちとは少し毛色が違って見えた。
不良たちは何処か飼いならされた、ペットショップの古典的な展示物のような敵意しかなかった。だが、千歳からは野生の殺意を感じる。
「今までのようにしても埒が明かない。今日で決着をつける」
指をさして宣言する千歳に、光はニヤリと笑い、腰に手を当て指を向け返した。
「ああ、俺ももううんざりだ。今日勝ったら二度と俺にこんな事をするんじゃねぇぞ」
「もちろん」
「あと、俺の妹の光にも絶対に手を出すなよ。人質とかしたら許さんからな」
「ええ」
少し距離を取った光に成り代わった透は、鬘を押さえながら表情を歪める。
「おいおい、それじゃあ俺がシスコンみたいじゃねーか……」
やめてくれよな、と意外と身体の力を抜いていたのだが、戦いが始まってからは同じように鬘が飛ばされないように頭を押さえて二人の様子を心配そうに見ている。
「うわぁ、やば、あの子やばぁ。なんだありゃ! うわ、うわっ!」
――情けない顔! 声! 最悪!
チッと兄に対して舌打ちを零すと光はその怒りを拳に乗せて千歳の顔へめがけて打ち込んだ。
瞬時に腕でガードされ弾き飛ばされた千歳は体制を立て直し距離を取って立ち上がった。
「ハァ、ハァ……」
――信じられない……新橋透……
息を整えながら思い出すのは初めて見た裏路地の光景だった。壁を蹴り空を飛び、一発で相手を地に伏せさせるあの見事な力。
――いえ、今までのあの雰囲気が嘘だったんだわ……目の前にいるのが本当の姿……!
普通の男の子のような顔をして生活していた姿を見て、相手の力を見誤っていたのかもしれない。千歳は油断を排除し、殺意を持って相対する。
校舎裏で透に一度殺意を見せて攻撃を仕掛けた。あの時はまだ油断などしていなかった。
ここ暫く無防備な透に攻撃を仕掛け続けて腑抜けていたのだ。
――私の見事なトラップ。けど、一度として当たってはいなかった!
自分を自ら叱咤し、崖っぷちへ追い込んでいく。叱ってくれる人間はいない、自分以外には誰も。
「はあぁぁ!」
気合を入れるように声を出す。相手を殺してやる。もし負けたらそれは死だ。
風が吹き荒れ砂埃が更に舞い上がる。目に入りそうになった光が目を細め、咳き込んだ。その瞬間千歳は飛び上がった。
目は閉じられ砂埃で何が何だか分からない。薄茶色の風景が広がる中、涙を流しながら左右、そして上を見上げた。
「その首もらった!」
「誰がやるか!」
気安く首を切り離そうとする千歳に、舐められたと光は血管を浮かび上がらせ腕を振り上げる。また踵落としだろうと拳に踵の衝撃がくるのを待っていた光は目を瞠った。
手の甲から手首まで真っ直ぐな赤い線が迸った。遅れるようにそこから熱が生まれ痛みが産声を上げた。
視界不良の中目を凝らしてみてみると、千歳の手の中にすっぽりと収まるような小型ナイフが握られていた。
蹴りではなくパンチ、しかもナイフを持っていた。
「ところで千歳、今の話は殺し屋としての話だ。今のお前はただの女子高生に過ぎない。ちょっとお転婆なだけだがな」
ふふ、と父はまた酒を一口飲んで冗談めいて言った。
「相手は男の子なんだろう? なら肉弾戦は不利だ。ちょっとハンデをもらってきなさい」
そう言って寄越されたのはこの小型ナイフだった。これでハンデになるのかどうかは千歳次第なのだろうと、手の中で軽く回して袖にしまい込んだ。
光は呆然と手の甲を見ていた。中指の付け根から手首までついた長い線。そこから伝い落ちる赤い血がグラウンドの乾いた地面に吸い込まれる。
どくどくとあふれ出るその光景をマネキンのように固まっている。隙だらけだ。
「おい、光っ……?」
透が思わず声を出してしまい、あわてて口を押える。
光は瞬きも忘れて流れ落ちる血を見続けていた。
千歳がそんな好奇を逃すはずもなく、今度は身を屈めて下から狙いをつける。
――隙だらけ! もらった!
滑り込み足を払い、光を倒した。そのまま仰向けになった光に跨り、また小さなナイフを取り出して喉へ向けて振り下ろした。
「何してんだ殺されるぞ!」
透の声も虚しくナイフは振り下ろされた。土煙でシルエットしか見えない透は、さぁっ、と顔を青くして震えた。
「ひ、光……嘘だろ……! 俺……俺、まだお前に謝ってないんだぞ……! あのプリン食べたの俺だって言ってないし、お前の本棚から漫画も返してないし! 虫歯になって頬腫れた時もザマァって笑ったことも、煉瓦に本当はアイツ性格悪い悪魔みたいな女だって言ってた事も、何も俺……!」
必死に透は立っていた。走馬灯のように妹の蛮行を思い出し、その理不尽に耐えた自分を褒める涙が溢れ出そうになる。
妹が殺された。
このまま無様に泣き叫ぼうかと膝をついた瞬間だった。影が動いた。
跨っていた千歳がそのまま前に倒れたのだ。
「……え……?」
振り上げ振り下ろされた腕の影の影になっていた場所に、光の伸びた腕があった。見事な丸い拳を作り、千歳の喉元に埋め込んでいたようだ。
だがまだ動かないうちは透も固まったままだ。勇者の銅像が倒れたように突き上げられた腕が、ゆっくりと力が解れて、むくりと上半身が起き上がった所で透は蟹股走りで光の元へ近づいた。
「光! よかった! 勝ったんだな!」
「ふん、当たり前でしょ。負けるはずがないわ……それよりも、クソ、この女私に傷をつけやがった……! これじゃあ変に思われるじゃないの、クソ、どうやって誤魔化そう……」
いつもより数倍も機嫌が悪そうな光の手の甲には見事な切り傷が作られている。包丁を使ってミスをしたというにはあまりにもダイナミックな傷だ。長さもあり、光は忌々しげに上に覆いかぶさっている千歳の頭を一発殴った。
「おい、死人に鞭うつような事は」
「煩い! 死んでないし! それにコイツムカつく! 傷物にされたわ!」
「言い方、」
「ま、今日ではっきりとけりがつけられてよかったんじゃない、お兄ちゃん」
「ああ、それはよかったよ、ありがとう」
「いいえー? それよりもねぇ、お兄ちゃん。さっき死んだと思った妹へ叫んだ言葉について色々とお話があるんだけれど」
にっこりと微笑み、指の関節を鳴らしながら近づく光に女装姿の透は後ずさる。
学ラン姿で帽子を被ったまな板の妹は、確かに男にも見えなくもない。
「ちょ、それよりも、その子! どうにかしないとな? な? だって俺今光だし、印象悪くしたくないだろ?」
「ふん、いいわ、家で聞いてあげる。……この傷も喧嘩に巻き込まれたって事にするわ……さ、早く脱いで、埃がカーテンになってるから!」
「ここで?」
光が学ランとズボンを脱いで透の服をはぎ取った。元の持ち主に返された服はしっくりとそれぞれ着こなされていて、手持無沙汰なのは鬘と帽子と倒れた千歳だった。
セーラー服のタイを直しながら、光は不機嫌そうに髪の毛を整える。
「それ、アンタが運びなさいよ。アタシは手伝わないわよ」
「俺が?」
「そうよ。そんな女どうなったってかまやしないんだから」
マンホールにでも落としておけば? と、襟を直し、髪とスカートを翻して土煙の外へ堂々と歩いていく。煙から出ると弱々しく喧嘩に巻き込まれた少女の歩みに切り替えるその器用さに透は苦笑いを零す。
さて、と、倒れた千歳に肩を貸すように持ち上げる。
――お姫様抱っことかできたら、格好いいんだろうけどなぁ……
そんな筋力があるわけもなく。ずりずりと千歳の足を引きずりながら保健室へ向かって歩き出す。丁度その時チャイムがけたたましく鳴り響き、窓に張り付いていた野次馬もすごすごと奥へと引っ込んでいった。



あんな事があっても光の周りには人が集まっていた。手の甲の傷すら、更に人を惹きつけるアクセサリーとなってしまった。同情、好奇、心配、興味。さまざまな感情を持った人間の渦中で人気者の顔をして微笑んでいる光を置いて、透は一人足早に帰路についた。
夕暮れ時の太陽は沈みかけていて、透の影を遥か遠くに引き延ばしていた。まるで影に操られているように、背後に夕日を背負っている。
「はあ……」
朝に大きな出来事がある日は大抵一日は長く感じられるが、今日はまた格段と長く感じた。疲労も一入だ。
「スカート履きなれてきたなー、俺……」
男としてどうなんだとがっくりと肩を落とす。まるで誰かが後ろから伸し掛かっているような重みを感じながら、グラウンドの二人の少女の攻防を思い出す。
あの中に透が入ったとしても、サンドバッグにもならない。落ちて来る枯葉のようにひらりひらりと無関係に動いて、無関係に攻撃を受けるだけだろう。
「あの子大丈夫かな……」
あの鬼のような光のパンチを喉にくらった千歳は放課後まで目覚めなかった。透も気が引けて様子を見に行くことはできず、光が変わりに様子を見に行ったのだが、それもそれで色々と気が引けてしまうが、気を遣う相手が気を使わせないでそのまま眠り続けているので何の問題もなかった。
「まあ、これっきりだろうけど……」
「まだ終わってないわ」
今回で終わる、と、自分に言い聞かせていた透の背後から夕陽以外の存在が突如現れた。
振り返ったその瞬間、透の頬をサバイバルナイフの刃が掠め、頬に赤い線を描いた。
その痛みよりもまず透が感じたのは、少しぼさぼさになった髪を背中にはらって、また構えを取る女子生徒の姿に思わず声を詰まらせる。
「は、あっ、櫃本!」
「あれは殺し合いよ! 私はまだ死んでない!」
「そんな! 俺はそんな事聞いてないぞ!」
「ちゃんと果たし状に書いたわ!」
「流し読みしたのが間違いだった……!」
「ゲームの説明書と一緒にするんじゃないわよ!」
透の下駄箱に入っていた果たし状は光が流し読みした後、光が鼻をかんでゴミ箱に捨ててしまったので手元にはない。
「まだ私は負けてない!」
「認めろよ!」
「負けてないもん!」
透の首を狙ってナイフを振り回す千歳は、子供のように頬を膨らませ涙をあふれさせながら叫ぶ。
だが、透は避けるのに精一杯でそんなかわいい姿も悪魔が微笑んでいるようにしか見えない。
「待て待て! 落ち着け櫃本!」
「殺したら落ち着くわよ!」
「殺すために落ち着けよ!」
「う……ん……………やっぱり無理!」
ぴたり、と透の制止の声に従ったが、すぐに身体を震わせて耐え切れないというようにナイフを捌きつづけた。
その動きは光相手に見せたような鋭さはなく、ただ手数が多いだけのものだったが、透には避けるだけでいっぱいいっぱいだ。
千歳が動揺していなければ確実に死んでいる。
「うわ、うわっ」
右に顔を反らし、下に顔を反らし、左に、上にと、攻撃をかわしながら一歩一歩下がっていた透は背中が壁にぶつかった瞬間に追い込まれていた事に気が付いた。
――うわヤバァ!
腰にぶつかった壁に手のひらを這わせる。確実に壁だ。確かに壁だ。どこかが豆腐でできていて逃げる事はできそうにない。
そして腰にぶつかった際に感じた更に固い感触に、透は目の前に迫りくるナイフを見て、咄嗟にそれを抜き取った。
ハンカチで包まれたサバイバルナイフ。まるで決闘に用いられる白手袋のように落ちていたもの。
それを落し物として拾い上げた透は、しっかりと刃を千歳に向けて落とし主へ返した。
「っ――!」
千歳が目を剥いて一瞬早く背後へ飛びのいた。
透の適当な、だが力のある一振りは遅れてついてくる長い髪の毛をばっさりと切り落とした。
肉の抉れる感触よりも、その何も切っていないような軽さに透は思わず固まった。
「……あ……」
やってしまった。という顔をする透の目の前には、肩まで真一文字に揃えられた髪、そして呆然と地面に散らばる長い髪の毛の束を見下ろす隙だらけの千歳。
妹を持つ兄として、女にとって髪の毛がどういうものか痛いほど知っている。ボタンに絡まった髪の毛を引きちぎってしまおうとした時、妹は容赦なく兄の頬を殴り飛ばし、奥歯を飛ばした。
髪よりも他人の奥歯の方が価値が低い。
「ご、ごめんな、俺……そんな……」
透のおどおどした声にも何も反応を示さない。握られたナイフはやっと暴れるのを鎮静させたようにぴくりと動かなかった。痛かった殺気も吹き飛んで、夕暮れの焼ける赤い中、千歳は風に吹かれて消えゆく髪の毛を静かに見守っていた。
そっと自分の肩に手を当てた。髪の毛の先がある。その先には何もない。空虚しかない。
心なしか頭が軽くなった気がするが、それは単なるショックのせいか。
――……切られた
目の前の男に。
――決めてたのに……。
ターゲットを見つけ、殺すまで伸ばし続けると決めたのに。
今まで死屍累々とした弱いターゲット候補の積み重ね。その歩みが宿っていた。そしてやっと見つけたというのに殺し損ねた。
千歳のターゲットはまだ息をしている。謝罪の言葉を懸命に探し、あわあわと百面相をしている。拳がぶるぶると震える。
「……うっ……うぅぅ……」
「ひ、櫃本! ごめん! 殺されるかと思って……!」
俯き悔しそうに泣き始める千歳に、透は落ちた髪の毛を拾い始めた。首がむき出しで隙だらけだ。涙が鼻水と混じって地面に落ちる。
髪なんて千歳にはどうでもよかった。坊主になろうがモヒカンになろうが悔しさや悲しさは感じない。
自分の決めたルールを達成できなかった事。ターゲットである透に負け、意識を失い、今度は問答無用で挑みかかったというのに、長い決意を断ち切られた。
「うえぇえぇぇん!!」
「ご、ごめん! 俺も坊主にするから! 泣き止んでくれ!」
「うわあああああん!」
灰が風に吹かれて消えるように、いつの間にか髪の毛もどんどん遠くへ流れて行った。風下には河川敷があり、夕日を反射する水面に千歳の月日が流れて行った。





20140205



Back/Top/Next